BERNACHONは「ベルナション」と読みます。
フランスのショコラトリー(チョコレート店)の名称です。

先日、ここのチョコレートを頂く機会があったのですが、
その美味しさに驚いて、思わず声を上げてしまったほど
でした。

私がいただいたのは、Le cube de Palets d'orという、
メゾンのスペシャリテで、親指の先大くらいのキューブ型
チョコレートなのですが、ひと口食べると、50%くらいの
ビターチョコレートのなかに、冷たさを感じる上品な甘さ
のスムーズなガナッシュクリームが隠れていて、あくまで
チョコレートの香ばしさと甘さが口のなかで溶けながらも、
それと同時に苦味と香りが鼻腔に抜けていく複雑な大人の
味わいです。

さらに、ガナッシュクリームの奥底には、本当に極々微量
のバターが閉じ込められており、最後のフィニッシュの
ところで若干の酸味を感じる小技が効いていました。
その結果「おぉ!」と声を上げてしまったのです。

本当に本物のチョコレートとは、こういうものかと思い
ました。

bernashon02.jpg

さて、このベルナションというお店ですが、フランスの
南東部にある都市リヨンにしかありません。パリでも、
タブレットと呼ばれるキューブ型のチョコレートは一部で
入手できるようですけれども、芸術的ともいわれる
ケーキは、リヨンの本店でしか食べられないそうです。

もうお分かりかと存じますが、そう、ベルナションは、
チョコ好きのなかでは、ブランドのなかのブランドなの
です。

ブランドという観点、あるいは市場的な視点からいえば、
ベルナションとは、

・フランスのショコラトリーで、
・リヨンに1店舗しかなく、
・今では数少なくなった、カカオ豆のブレンドからチョコ
レートを製造する、
・今年で創業60年の老舗で、
・毎日美食の街リヨンの人々を唸らせている。

と形容されるでしょう。

しかし、ショコラティエの業界でのブランドといえば、

・ベルギーのブリュッセルで、
・ベルギー王室御用達で、
・一番古いメリーは創業1942年、
・みなさまお馴染みのゴディバは、世界中に1000店を
超える店舗展開をしている。

とブランド力の違いを感じさせます。

さて、ここで出てきた「ブランド力」という言葉を、少し
考えてみたいのですが、「ブランド」とは、経営学的には
超過収益力と説明されますので、ブランドに消費者を
惹きつける魅力があれば、ない企業に比べて売上も
利益も差がつくことになります。

上記の例でいえば、ゴディバは正しくその通りでしょう。

では、ベルナションはどうか?

一部のチョコレート・マニア(そう、チョコレートには
マニアと呼ばれる人々が存在する)だけに、熱狂的に受け
入れられている、やはり強力な訴求力をもつブランド
です。

ならば、ベルナションもゴディバのように、世界中に
多店舗展開すれば、現在とは比較にならない収益を上げ
られるのではないか?

しかし、これはベルナションを知らない人、あるいは
一人歩きする「ブランドだけ」を愛好する人の意見です。

ベルナションをベルナションたらしめているのは、独自に
カカオを輸入、ブレンドして、焙煎するからこそ生まれる
フレッシュで複雑な味わいです。

これは、残念ながら現代のハイテクを駆使して、衛生管理
された近代的な工場を世界中に散らばせて、100%自動
生産をしようとしても作れないでしょう。

なぜなら、合理性が特徴の機械生産では皮肉にも非合理性が
求められるため、経営合理性を失ってしまうことと、消費
者である人間の味覚の方がはるかに高性能だからです。

ベルナションは、そこに立脚して美味しいチョコレートを
提供し、顧客はそれを欲してリヨンの店舗へやってくる。
この強さこそが本物のブランドではないでしょうか。

そして、この強いブランドを作り出している本質は、他の
ショコラティエが手掛けるのを止めてしまった「手作り」
にあり、その違いがブランドを作り出している。

昨今は、ブランドという言葉が、証券化されたがごとく、
いとも簡単に一人歩きする社会になっていますけれども、
本質的なブランドは名前だけが勝手に歩き出すようなもの
ではありません。

昨今では、よくブランディングと称して、ブランドが論と
して語られ、差別化という言葉と一対になって用いられて
賞賛されていますが、差別という言葉が、本来誤った視点
から使われるものとして賞賛に値しないのと同様に、
ブランディングという言葉もまた誤った視点から使われて
いることに気づくことが、本来のブランド成立の第一歩と
言えます。

けだし、違いを作り、受け入れられ、その違いに名称が
ついたものがブランドだからです。

本質的な差異化を訴求し、強く長く受け入れられるもの
こそが、商売的にも、販促的にも、市場的にも、経営的
にも、ブランドと呼ばれる資格に値するでしょう。

他人と違うことから始めましょう。


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