昨年最後のブログはBBのプロトタイプでしたが、今年最後の
ブログは最新鋭V8のスパイダーモデルです。

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40年前はBBとディノだったカタログも、今やF12にFF、
458とカリフォルニアの4モデルと倍に増え、来年にはエンツォ
に次ぐスペチアーレの発表が控えていて絶好調。史上最高の
モデルは「次のものだ」という精神は脈々と息づいています。

かつてピッコラと呼ばれたV8モデルも、全幅が1937mm
とマイクロバス並みとなり、もはや小さいどころか立派なクル
マになってしまっているので、そんな大きなクルマを走らせる
ことができるのかと思いました。

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この個体は、エクステリアがパール・ホワイト、インテリアが
ロッソという組み合わせで、コックピットに乗り込むとまるで
クラブにでも来たかのように血が騒ぐのを自覚します。

はやる自分を抑えてシートを合わせると、かつてのモデルからは
信じられないほど完璧にシート合わせができて、クルマが自分に
合わせてくれるのが分かりました。

シートが合ったからといって、578馬力もあるエンジンがミッ
ドに搭載されているのは変わりませんが、非線形スロットルで
ちょっと踏みすぎたら飛んでいってしまうのではないかという
杞憂も、やがてすぐに無用の長物となりました。

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市街地走行向きのシティモードでは、ブリッピングをくれても
3500rpmでレブとなるよう設定され、閉じられたバルブ
と共に壮大な排気音を撒き散らすということはありません。さ
らにこのモードでは、ドイツ車のATのように積極的にシフト
アップされ、60Km/hでの定速走行でのギアは7速です。

つまりエンジンにトルクがあるので、時速100Km/hくらい
までの加速なら、何速からでも賄えるようになっていて、発進
加速ならもちろん1速ですが、それに近い低速の追い越し加速
でもフラットトルクのエンジン特性もあって、7速での加速で
も周囲のクルマより瞬発力強く加速してしまいます。このトルク
感はちょっと独特で、まるでメルセデスみたいだと思いました。

一方、ステアリングの方はシビアという言葉が適当ではないか
と思うくらいクイックで、パワーアシスト付のハンドルは手首
どころか親指の第一関節に力を入れるだけでヨーがつきます。

そういえば、ステアリング、ペダル、レバー、ボタン等々、全て
の操作系は軽く、これなら女性の買い物用にも十分使える車両
に仕上がっており、巨大な馬力をコントロールしなければなら
ないレーシングカーのイメージとかけ離れていました。私は
当初後者をイメージしていたため、若干ゲーム機っぽいとすら
感じたことも付記しておきましょう。

そういう積み重なったスポーツカーに対するステレオタイプな
イメージと、実際に乗って運転した体感覚とは、自分自身の
両腕を水平に広げるくらい離れており、「スーパーカー」とか
「スポーツカー」とか「GTカー」といった形容は、こと市街
地を走る限り微塵も感じられないBMWのようなクルマでした。

けだし、もし私のようなものにドライヴィング・インプレッション
なるものを許していただけるなら、メルセデスのようなエンジン
感、BMWのようなステアリング感などを遥かに超えて、これは
イタ車だけがもつバネ下の軽いフィーリングと、人生を賛歌す
るようなインテリアは、その総体としてアマルフィの海岸ドラ
イヴのように晴れやかであり、人生が軽く幸福に包まれるのを
実感します。

それが証拠か、追越車線を猛追してきたアルファ156に進路を
譲ったら、ミラネーゼは5時の方向にピタリと寄せてランデヴー
のひとときを楽しんでいるようでした。それは、まるでサン・
マルコ広場で音楽を聞きながらコーヒーを飲むように甘美で
優雅だったのです。

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Grazie e Buon anno!