「世界に誇る日本の小さな蒸留所」

WEBで「メルシャン軽井沢蒸留所」と検索すると「キリン軽井沢
蒸留所」がトップに表示されますが、現地にはどこにもキリンの
文字はありませんでした。

メルシャン軽井沢蒸留所

軽井沢というところは、明治時代に英国国教会の宣教師だったアレ
キサンダー・クロフト・ショーが「スコットランドに似ている」と
して愛好したところから現代に発展してきたわけですが、発展史は
別としてもスコットランドとよく似ていれば、ウィスキー熟成には
最適地ということになります。

その、品質にこだわったウィスキーを作り続けてきた、日本でも
1,2を競う最高級の蒸留所がもうまもなく閉鎖となります。
今週末まで。

私は何度か蒸留所の前を通ったことがあったのですが、なにぶん
いつもクルマを運転していたので訪問することができず(蒸留所を
訪問して試飲せずに帰れません)、今年3月にメルシャン軽井沢
美術館閉鎖のリリースに触れてから、秋までに見ておかなければと
思ってきました。

日本で一級のウィスキー蒸溜所に違いないのですが、会社の資本関
係や製品ポートフォリオ等のビジネス上の理由からでしょう、既に
数年前に蒸溜を停止していたためか、麦汁やウィスキー香がほとん
どしない寂しい場所になってしまっていました。

それでも何故かウィスキー蒸溜設備は撮影禁止でしたので、蒸溜棟
外から少しだけ姿を覗くポットスチルで精一杯です。

メルシャン軽井沢蒸留所

蒸留所見学ツアーは1日に数度行われていましたけれども、各製造
設備の前で決められた解説原稿が読み上げられる内容で見学という
よりは散歩のような印象でしたが、見学ツアー後にヴィジターハウ
スで振舞われる試飲ウィスキーは一級の価値があり、このまま歴史
に埋もれさせてしまうのはあまりに惜しいです。

私が軽井沢の実力を知ったのは、意外にもプレイン・オーク仕込み
のプライベートカスクだったのですが、オフィシャルのシェリーバッ
ト仕込み同様に、ゴールデンプロミス種ならではのピュアなモルト
と樽熟成香とのバランスが際立って美味しく新鮮なまま熟成している、
正にウィスキーらしいウィスキーだったのを今でもよく覚えています。

世界中のウィスキー蒸溜所でオプティック種が一般的になるなか、
頑固にゴールデンプロミス種とシェリーバットに拘ってきた、日本
が世界に誇る高品質ウィスキーを何とか存続させることはできない
ものかと思い、製品側から見れば十分にそれは可能と外から見ても
(おそらく蒸留所の皆さまも)考えられますが、キリンのような大会
社の食品事業からみれば些細な低成長事業に見えてしまうのかもし
れません。

もしマッカランが閉鎖となれば世界が黙ってはいないだろうに、軽
井沢が閉鎖となるも日本国内の玄人だけが淋しがっている。至極残
念です。

そういえば、メルシャン軽井沢蒸留所と美術館は同一敷地内にあり
ますが、別なんだそうですよ。

ということは、軽井沢蒸留所だけを事業体として外部から考えるこ
とができるということじゃないですか。

ポットスチル4器、ウォッシュバック5器、ウェアハウス3棟。

蒸留所を買収できれば存続の可能性はあるんじゃないの?

感謝!