プラダのパトリッツィオ・ベルテッリ氏(ミウッチャのご主人)が、
ウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューに答えて、
「ファストファッションは高級ブランドにはプラス」と仰られて
います。
http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_315648

記事によると、「彼ら(ファストファッション)はファッションを
まねて低価格で売る。そして、若者はファッションのほうがブラ
ンドより大事だと気づいた。 そしてあるとき、若者は本物を
買いたくなるだろう。だからザラやH&Mは大手の高級ブランド
のビジネス拡大に貢献している。 」

先日パリに行ったとき、高級ブランドの衰退に気づきました。

プランタンの正面入口には、ファストファッションの看板が掲げ
られ、地下鉄の駅からはギャルリー・ラファイエットの広告が
消えていました。これは事件だと思いました。



ベルテッリ氏の発言を読み込まなくても「これまでファッションが
欲しくて高級ブランド品に高額の支出をしていた若者が、高級ブ
ランド品に似た低価格品があるならそちらを選ぶようになった」
といえます。

長期の時系列でみると、ファッション(モード)の歴史は大衆化の
歴史です。かつて王侯貴族しか愛好できなかったスーツやドレスが
生産量の増大や技術革新や情報流通の充実に伴って社会全体に
行き渡り、さらにIT技術による販売から商品企画までの一元化
によって時間もコストも労力も削減して市場に浸透させることが
できる時代になっています。

それにリーマン・ショックやユーロ危機、先進国の低成長デフレ
経済がボディブローのように効いているのが現在のモード・ビジ
ネスです。

日本市場だって、ヴェルサーチやジャンフランコ・フェレが撤退
して復帰できないのだから状況は同じです。

ここまでで分かっていることは、氏がいう「若者」はファッショ
ンを求めて(無理して)高級ブランドを買うことが少なくなってい
ること、ファストファッションが高級ブランドの真似からビジネ
スのサイクルをスタートさせていること。

さて、「そしてあるとき、若者は本物を買いたくなるだろう。」
という点について、人間の心理としてかなりの可能性で「有り得る
話」でしょう。私も学生の頃に憧れたスーツを今頃買っていたり
しますから。

だとして、それは一体いつなのか?それが分からなければビジネ
スはできません。

「若者が本物を(実際に)買うとき。」それは、早くて5年遅ければ
20年後ではないのか。それまでヴェルサーチやフェレは存続で
きるのか。プラダも同じではないのか。ジェイコブズも。

もちろん、高級ブランドだって黙ってはいない。「高級」を本物
にすべく更なる高級志向を高めて価値と事業存続のシナジーを
狙っている。

またヨーロッパの人々は交渉と契約の世界で生き抜いてきたから、
今回だって新しいルールを作り出すだろう。

例えば「光沢あるライムグリーンのサテン・スーツ」なんて、い
くらファストファッションが真似したくたって真似できない。
そういう風に変化していくだろう。

ロゴとバッチのブランドビジネスは5年20年持たないだろうが、
光沢やライムグリーンやサテンの秘密を知っているなら高級ブラ
ンドも存続できる。

問題は、高級ブランドでもなくファストファッションでもない
中間層だ。これらの企業は商品やデザインに強みがあるわけでは
なく、ファストファッションの効率性の面でも劣るため収益力を
失ってしまう。業界全体が無くなることも想定できる。

存続と繁栄の秘密は、雑誌やテレビやネットには出てこないが、
知っている人だけは確かに知っていて、それは本や新聞やMBA
で出てくる「ブランド論」とは別のところにある。

その別のところを知っている人だけが新しいものを作れるだろう。
私の関与先は、もう新しい取り組みを始めている。

感謝!