4月最終週の日曜日朝。モデナ駅近くのホテル。小鳥のさえずり
で目覚める。

中庭に通ずる窓を開けると、ひんやりとした冷たい空気に身震い
するが、冷えて乾いた空気が美味しい。

当時はまだ喫煙者だったので、日本から持っていったヴァージニ
アスリムで一息つくあいだに意識がはっきりしてくるのが分かっ
た。今日はイモラの日だ。

イモラとはフジテレビの呼び方で、彼の地ではイーモラと発音す
る方が正しい。サンマリノ共和国の名を借りてF1が開催される
のは、正しくは近隣にあるイタリア・イーモラのアウトードロモ・
エンツォ・エ・ディノ・フェラーリだ。

イタリアはカトリックの国だから、日曜日は静まり返ったように
お休みばかりだが、特にこのエミリア・ロマーニャの古い中世の
街はひっそりと時間が止まったように感じる。

モデナの駅から各駅停車のレッジョナーレに乗る。ボローニャで
は、真っ赤な装いでひと目でそれと分かる大勢のティフォージが
大声でしゃべりながら乗り込んできた。

ガヤガヤと騒々しい車内と静まり返った大地のコントラストが、
年に一度の大運動会のように今日が特別な日であることを物語っ
ていた。

イーモラの街は、毎年恒例のフォルムラ・ウーノをやはり毎年恒
例のように歓迎していた。駅からサーキットへの一本道には、万
国旗が掲げられ、街の中心にあるドゥオーモ広場ではレースに合
わせイベントが開かれて、興奮した子どもたちが走り回っている。

F40が宇宙に向かって飛び立つようなモニュメントがあるサー
キット入口では、当日券を求める60分待ちの行列が並び、チケッ
トを持っている観戦客と交差する。このちょっとした混乱がイタ
リアだ。

トサを鋭角に回ったモノポストマシンは、小学校脇の上り坂を時
速200km/hで駆け上がる。

アックア・ミネラッリを片付け、坂を下ってきたキミ・ライコネ
ンのマクラーレンは、突き刺さるようにリヴァッツァに飛び込ん
で9時の方向へ2度回転した。

そう、ここはかつてあった20世紀のいつものF1グランプリが
開かれていたのだ。

サン・マリノグランプリ

DHに捧ぐ。

感謝!